新型ウイルス感染症が法律上、季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられた。世界的流行から3年余り、私たちは多くの犠牲を払い、マスク生活をしてきた。再流行は心配だが、大きな転換点だ

▼米国のコメディー映画「マスク」が製作されて今年で30年目になる。多くの感染者が苦しむ中、あのハチャメチャな大ヒット作に触れるのは、ずっと気が引けていた。気弱でさえない銀行員が偶然見つけた仮面を着けると、陽気で型破りな超人マスクに変身する物語だ。マスクはギャングをやっつけ、恋人ができる

▼この連休に再び鑑賞し大笑いしつつ、今だから一層胸に響くセリフを見つけた。物語の最後、仮面との決別を決めた主人公が恋人に言う。「本当にいいのか。僕しか残らないよ」。仮面があれば何でもかなう。でも恋人は包み隠さない素顔の彼を選ぶ

▼日本では3月にマスク着用は個人判断になったが、街を行き交う人の9割方はまだマスクをしている感じか。今後はコンビニやサービス業で脱マスクが進むようだ

▼人気音楽家の大江千里さんがニューズウィーク日本版の最新号に書いている。「『なんとなく』『周りが着けているから』を続ける『流される感じ』は、16年間アメリカ暮らしをしている僕の目には異様に映る」

▼素顔で接する「通常モード」に戻る機会を失わないでと大江さんは言う。私たちはマスク生活を通じ「3密」回避など多くの衛生マナーも学んだ。気を抜かず、5類移行後の新時代に踏み出したい。

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