何事にもとらわれず、自由自在に対応できることを融通無碍(むげ)という。そんなふうに振る舞える人がうらやましい。この四字熟語はもともと、仏教の用語であったそうだ

▼「万物は互いにつながり、影響し合って調和を保っている」という意味らしい。「融通」は「さまざまなものがとけ合い、通じ合う」ことを指した。今では、金銭などを都合して貸し借りしたり、状況に応じて適切な処置をしたりすることを意味する

▼文字通り「金銭」の「融通」と書いて「金融」である。現代社会には欠かせないシステムだが、欧米では銀行の破綻が相次ぐなど金融不安がくすぶっている。交流サイト(SNS)に投稿された情報で信用不安が急速に広がるなど、新たな形の危機が表面化した

▼この問題にどう向き合うか。世界共通の課題と言っていい。新潟市できょう開幕する「先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議」でも大きなテーマの一つになりそうだ。世界経済が新型ウイルス禍から回復する上で、金融システムの安定化は欠かせない

▼ともすれば世界経済の話題はとっつきにくいが、私たちの暮らしに直結している。ロシアのウクライナ侵攻が各種のモノやサービスの高騰を招き、庶民の財布にどれだけ影響を及ぼしたことか

▼万物は結びつき、影響を及ぼし合っているという仏教の教えを思い返す。そう考えれば、あらゆるものが金銭でつながる経済は、この世の象徴ともいえそうだ。多くの課題に、融通無碍に対応できるだろうか。

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