夏の新潟競馬のパドック(下見所)で、周回している競走馬が突然倒れたのを見たことがある。照りつける日差しの下、500キロ近い巨体が音を立てて崩れた。馬も熱中症にかかるのだと、そのとき知った
▼寒さに強い一方、暑さは馬の大敵だ。レース前に激しく発汗している馬の凡走はよくあること。夏バテした馬は目の周りが黒く見え、覇気がなくなる。気温の上昇に対し、汗で体温を下げる機能が発達していないのだという
▼暑熱対策は日本中央競馬会(JRA)の重要課題だ。馬が過ごす馬房にエアコンを付け、レース前に日なたに出る時間をぎりぎりまで遅くした。パドックを回る馬に霧状の水を吹きかけ、ゴール後に体温を下げるための馬用シャワーも導入している
▼涼しく過ごしたいのは馬に限らない。フランス出身のトップジョッキーは暑さ嫌いで知られ、夏のメイン開催である新潟ではなく札幌を主戦場にしている。全身を使う過酷な仕事なだけに、余計な消耗を避けたいのだろう
▼JRAは来年、夏競馬に3時間半の「昼休み」を設ける方針だ。午前のレース後、最も気温が上がる時間帯を休止時間にして午後3時ごろ再開する。最終レースは午後6時半ごろになる見通しだ。来場者を飽きさせない工夫が必要になるなど課題はあるが、人馬の安全を最優先にする姿勢を評価したい
▼きのうの県内は暑くなり、真夏日になった地域があった。スポーツ界だけでなく、新発想で暑熱対策に取り組む必要があるのかもしれない。