原爆の悲劇を象徴する地に足を踏み入れた首脳の胸中には何が去来したのか。きのう、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に出席するため広島市に集まった各国トップは平和記念公園や原爆資料館を訪れた
▼サミットでは毎回、首脳が開催地を象徴する場所を訪れたり、市民と交流したりする場面が用意される。2000年の九州・沖縄サミットでは那覇市の首里城で記念撮影をした。その中に今では参加が考えられない人物がいた。ロシアのプーチン大統領である
▼当時はロシアを含めた「G8」の枠組みで開かれた。プーチン氏はサミット終了後、小中学生の柔道大会を見学した。子どもたちの乱取りに、上着を脱いで飛び入り参加する場面もあった
▼中学3年の男子生徒を一本背負いで投げ、生徒を促して投げられもした。会場に向けて「柔道が好きな人はみんな家族」と話すと、大きな拍手に包まれた。今になってみると隔世の感がある
▼それから23年がたった。プーチン氏はウクライナから撤退しようとせず、核兵器の使用さえちらつかせ国際社会を威嚇する。「核なき世界」への道のりは厳しさを増しているのが現実だ
▼だからこそ、核保有国を含むG7のトップがそろって原爆資料館を訪れた意味は大きいと思いたい。館内でどのように過ごしたかは不明な点もあり、核軍縮への動きというには形式的な色合いが強いのかもしれない。それでも、惨禍の記憶を伝える場所から何かを感じ取ったことを願わずにはいられない。