この時期になると新年度のふわついた感じが薄れ、学校ではクラスや部活の雰囲気が固まってくる。うまくなじめた子どもたちの一方で、居場所を見つけられずに悩んでいる子もいるかもしれない
▼梨木香歩さんの小説「西の魔女が死んだ」は5月に不登校になった少女を描く。英国出身の祖母の元に身を寄せた少女は心のこわばりを解いていくが、傷は消えていない。親が提案する転校も、弱さゆえの「敵前逃亡」だと思ってしまう
▼不登校が増えている。文部科学省の調査では、2021年度に30日以上欠席した県内の小中学生は3854人と、これまでで最も多かった。全国でも過去最多の約24万5千人に上る。一部の子どもの問題ではない
▼県教育委員会は本年度、不登校対策プロジェクト校を小中計8校指定した。子どもの思いをくみ取るアンケートの方法など効果的な対策を探る。国も子どもの事情に合わせ柔軟に教育課程を組める学校を設けたり、登校しなくてもオンライン授業を受けられる環境を整えたりするよう促す
▼不登校の背景は一人一人異なる。苦しむ子どもたちにどれだけ前向きな選択肢を示せるか。登校以外の道もあるだろう。答えは一つではない
▼「西の-」で祖母は少女に語りかける。「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ」「シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」。心に沿った道を見つければいい。