「青は藍(あい)より出(い)でて藍より青し」。青色の染料は藍の葉から取るが、元の藍より青く、美しくなる。これに例え、弟子が努力して師を超えることを「出藍(しゅつらん)の誉れ」と言う。この言葉がぴったりの催しが新潟市の雪梁舎美術館で開かれている

▼「Miyata-金工 宮田家のはじまりから、その先へ-」だ。佐渡の宮田家は金工をはじめとした芸術一家。初代からひ孫まで一門9人の作品約100点が並ぶ

▼宮田家は江戸時代まで染物屋で藍を扱った。このため蝋(ろう)型鋳金を始めた初代以降、後継者も「藍堂(らんどう)」を名乗る。とかく芸技や味は「一子相伝」などと秘密めいた親子、師弟関係が多い。だが宮田一門は個性を競う

▼「作ってなんぼでない。作って、喜んでもらってなんぼ。でなければ粗大ごみ」。こう話すのは77歳の宮田亮平さん。東京芸大学長や文化庁長官を務め、芸術院会員で日展理事長という文化のけん引役だ。作家と鑑賞者が感動を共有する大切さを強調する

▼代表シリーズ「シュプリンゲン」の新作「昇華」は、数十頭のイルカが渦を巻くように海面から天空を目指す。海や空の青が濃淡をつけて群れを導く。体に光る黄金色は世界文化遺産を目指す金山にも通じよう

▼「よかったら一つ持って帰って」。亮平さんは得意の冗談で来場者を笑わす。朱鷺メッセでは県展も開催中。1945年の初回審査には、初代藍堂の弟子で本県最初の人間国宝、佐々木象堂が加わった。両展覧会を巡り、郷土の出藍の誉れを探すのも楽しい。

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