ここ数日の間に北朝鮮が発したものがある。一つは軍事偵察衛星を載せた弾道ミサイル。きのうの発射では衛星の軌道投入には失敗したが、当局はなるべく早く再度打ち上げるとしている

▼もう一つは日朝協議再開に触れた談話である。岸田文雄首相が首脳会談実現のために高官協議をしたいと述べたことに絡み「日本が関係改善の活路を模索しようとするなら、朝日両国が会えない理由はない」とする北朝鮮外務次官の談話が伝えられた

▼対話再開に言及するのは久しぶりだ。ただ、談話は拉致問題を「解決済み」との従来の主張を繰り返し、日本に拉致や安全保障問題で態度を変えるよう求めている。対話再開が早期に実現する見通しはない

▼北朝鮮は、軍事衛星の打ち上げで日本に危険区域設定を伝えてきた。対話再開に言及した談話も、安全保障で連携する日米韓にくさびを打とうとする狙いが透けて見える。かの国のペースに巻き込まれる事態は避けねばならない

▼一方で、どんなに小さなきっかけであれ、対話の糸口を探す必要もあるのだろう。拉致被害者の横田めぐみさんの母、早紀江さんは一昨日の記者会見で「良いチャンス」と期待を寄せた。きのうの本紙には、苦しそうに目をつむる早紀江さんの写真が載っていた。その胸中を思えば、どうにかして対話につなげたい

▼広島サミットの開催をはじめ、首相は「外交の岸田」を看板にしたいようだ。北朝鮮が発したものに対して、日本が何を発するかが問われることになる。

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