しっかりとした基盤を持ち、定着していることを「根差す」という。植物が土中にびっしりと根を張り巡らせることから来た言葉だが、各地の伝統野菜は文字通り地域に根差す存在だ

▼先日の本紙魚沼面の見出しに目を引かれた。「名産とう菜の旬到来」。南魚沼市の「大崎菜」と魚沼市の「八色菜」を紹介していた。雪に囲まれたビニールハウスの中、八海山からの伏流水で育つという。葉の鮮やかな緑色がまぶしい

▼こうした「とう菜」は本県の伝統野菜の代表格だろう。新潟市では「女池菜」が有名だ。県園芸試験場の参事を務めた瀬古龍雄さんは、県内にはほかにも「芹田菜」「大月菜」「城之古(たてのこし)菜」などがあると書いている。さながら地場産「とう菜王国」だ

▼とう菜の「とう」は、花をつける前の茎を意味する。この「とう」がうまい。ほろ苦いのに甘い。わずかにむちっとする歯応え。ほんのりとしたぬめりと鮮烈な香りが食欲をそそる。おひたしや煮物が定番だが、ソテーにしたりパスタと合わせたりしてもいい

▼甘くなるのは冷え込みが厳しくなると、凍結を防ぐために細胞内のでんぷんが糖に変わるためという。そのため、あえて雪をかぶるように育てることもあるそうだ。とう菜は厳しい寒さに耐えつつ、少しずつ力を蓄えているのだろう

▼きのうは立春だった。暦の上では春となっても寒さはまだまだ厳しい。新型ウイルス禍の出口も一向に見えてこない。厳しい毎日に耐えながら、とう菜に倣って力を蓄えられれば。

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