凡ミスだらけの“迷ゲーム”はついに終盤に差しかかったようだ。柏崎刈羽原発を巡り失態続きの東京電力に、地元柏崎市の桜井雅浩市長は「ゲームセットが近い」と述べた。東電への信頼が、完全に失墜する寸前に迫っているという意味だろう

▼桜井市長は2017年、免震重要棟の耐震性について事実と異なる説明をしていた東電に対し、過去の不祥事と合わせ「スリーアウトチェンジに近い」と野球に例えて不信感を示した。その後も“アウト”が続き、いよいよ試合終了が近づいてきた

▼大きな事故のリスクを抱える原発を、東電が安全に運転できるのか。東電に代わって運営できる組織もあるのではないか。桜井市長は、そんな自問自答を繰り返しているとも述べている。立地自治体の長がここまで言わざるを得ないのは、よくよくのことだ

▼柏崎市に隣接する長岡市の磯田達伸市長も先月末、東電に原発を運転する適格性があるかについて「現時点ではない」と述べた。国に対しては「東電ではない発電の体制や仕組みを考えた方がいい」と求めた

▼両市長以外にも県内の首長や県議の中には東電の適格性を疑問視する声がある。その胸の内や思惑は一様ではないのかもしれないが、立地県から原発事業者の能力にこれだけ疑問の声が上がる事態をどう受け止めればいいのだろう

▼柏崎市の桜井市長は、こうも述べている。「東電の能力を信じている部分もいまだある」。突き放し切れないということか。何やら切なくなってくる。

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