新潟市東区の桃山小学校にひっそりとたたずむ像がある。1964年6月16日に起こった新潟地震で、教諭が児童を守った様子を表した「桃山の碑」だ

▼大地は揺れ海水はあふれ黒煙は天をおおう-。碑には当時を伝える文言と、教職員42人の名前が刻まれている。近くの石油タンクで火災が発生し教諭らは児童を高台に避難させた。最後の子どもを無事親元に引き渡したのは3日後。保護者らが教諭の行動を後世に伝えようと建立した

▼新潟地震の伝承碑は少ない。国土地理院に登録されている新潟地震の伝承碑は、この碑と県民会館前にある教師と避難する児童を題材にした「みちびきの像」だけだ

▼10年ほど前、桃山小児童と新潟地震の痕跡が残る場所を巡った。橋桁が落ちた昭和大橋は当時の橋脚が一部再利用され、新しい橋脚と共に橋を支えていた。新潟駅に近い飲食店街には液状化現象で傾いたままのビルがあった。初めて見る光景に、児童と一緒に驚いたことを覚えている

▼その数年後、桃山の碑の前に、道端で摘んだと思われる花が供えられていた。地震当時6年だったOBが見つけ、児童が墓だと思って置いたのではと推測した。災害を伝え続ける難しさを感じたOBは地震を伝える像だと分かるよう、碑の脇に標柱を設置した

▼地震が相次ぐ。5月に石川県珠洲市で震度6強、本県で震度4を観測する地震があった。今月も北海道で震度5弱を観測した。新潟地震からきょうで59年。改めて過去を振り返り災害に備えたい。

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