80歳を越えた母親は、サービス終了期限が迫る旧型の携帯電話「ガラケー」を使い続けている。家族か友人と話すくらいで、カメラ機能もメールも縁がない

▼スマートフォンに保存した写真を見せようと手渡したが、画面を軽く触る操作が難しいようだ。ガラケーのボタンのように強く、長く押してしまうから、思うように写真をめくれない。スマホへの買い替えを勧めても「無理らて」とあきらめ顔だ

▼同世代は“タッチパネル恐怖症”が多いらしい。ATMも苦手で、銀行では窓口へ直行。すしや食堂チェーンではタッチパネル注文が増えているが「年寄りが行きにくくなった」と愚痴を言い合っているという

▼政府のスマホ利用などの世論調査によれば、使わない、または不慣れな人は約2千万人いるらしい。70歳以上の6割近くがスマホと縁遠い。本県は3人に1人が65歳以上で、全国より7年早く高齢化が進む。デジタル時代についていけない人の手助けが必要だ。より簡単に操作できるスマホの登場も待たれる

▼一方で「チャットGPT」など対話型の生成人工知能(AI)は進歩が著しい。文章や画像、音楽も指示に従い、作り出す。著作権や偽情報の発信などの懸念もある中、仕事や教育現場でスマホを通じた利用が広がる

▼親しい人の死後も、残された音源があれば生成AI越しに茶飲み話ができるかもしれない。1人暮らしのお年寄りが、スマホやロボット相手にこたつで団らんする-。そんな光景が出現するのだろうか。

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