鮮やかな身のこなしで空中を舞う。体操の後方転回や後方宙返りは、それぞれ「バク転」「バク宙」とも呼ばれる。テレビや映画のヒーローが披露することもある

▼その姿に憧れる子どもも多いようだ。少し前の本紙投稿欄「窓」には、バク転やバク宙を教えてくれた体操教室の講師に「僕の世界を広げてくださった」と感謝する中学生の言葉が載っていた

▼幅広い年齢層の好評を呼んだアニメ「バクテン!!」には、バク転に憧れて新体操を始めた男子高校生が登場する。華やかなレオタードを着た若者が音楽に合わせてキレのある技を繰り出す姿は、実力派のアイドルグループに重なる部分がある。人気を集めたのもうなずける

▼男子の新体操への注目が高まっているという。国民体育大会(国体)から改称する来年の国民スポーツ大会(国スポ)では、16年ぶりに競技に復帰する。本県にも新体操に熱中する男子選手がいる

▼国内の競技人口は五輪種目である女子の8分の1ほどの約1300人にとどまる。海外の実施国も米国やカナダ、ロシアなど極めて限定的で、女子のように大きな国際大会はないのが実情だ。普及には練習環境の整備や指導者の育成も欠かせない

▼一方で、女子競技のイメージが強かった新体操に取り組む男子が増えるのは、スポーツ界の男女格差を解消する一助にもなるだろう。男子向け、女子向けなどという区分に、どれほどの意味があるのか。見事なバク転を披露する男子選手を見ていると、考えさせられる。

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