初めて出会った人と話をするとき、交換した名刺を最初の話題にすることがある。似顔絵や地元の名所の写真があれば、「ご自分で書いたんですか」「きれいな所ですね」と会話が弾む
▼最近はQRコードを載せてホームページや交流サイト(SNS)に誘導する名刺も多い。裏面にさまざまな情報を盛り込んだものもある。覚えてもらいたい、PRをしたいという気持ちが伝わる
▼先日は点字入りをいただき、会話が大いに盛り上がった。妙高市の新井商工会議所の会頭を務める西脇治雄さんは、5年ほど前から福祉作業所に発注して点字を打ってもらっている。視覚障害者の仕事づくりの一助になりたいと考えたからだ
▼点字入り名刺は福祉の観点だけでなく、ユーザー自身にも利点があるという。初対面の人とも話が広がる。相手に覚えてもらいやすい上に、良い第一印象を与えられる。「障害のある人たちにとっても、私にとっても良いことばかり。名刺を渡した相手が点字に関心を持ってくれるとさらにうれしい」とほほ笑む。「三方よし」の取り組みだ
▼障害があってもなくても、安心して暮らせる社会でありたい。多くの人に共通した思いだろう。でも思うだけではもったいない。自分自身は何ができるか。小さな一歩を踏み出したい
▼西脇さんに仲介してもらい点字入り名刺を作ってみた。少し良いことを始めた満足感だけでなく、人と出会うことが楽しみになってきた。 「気付いてもらえるかな」。そんなワクワクも楽しい。