南魚沼の雪と暮らしを映像を通して体験する県企画のオンラインツアーに先日参加した。自宅にいながら山間地にある栃窪集落での雪下ろしや塩沢名産の織物の見学をした
▼一度赴任した地でもあり、懐かしかった。沖縄や宮崎など暖かい地方からの参加者もおり、2メートル以上の雪に「身を乗り出して見ています」というメッセージを送っていた。ウイルス禍で実際に観光地を訪れることが難しい中、こうしたツアーも一つの楽しみ方になっている
▼先月の本紙窓欄に「制限の中でも最高の体験」と題した三条市の高校生の投稿があった。予定していた沖縄の修学旅行が、感染対策で新潟市の新潟ふるさと村への日帰りバスツアーに変更された。周りの大人たちはかわいそうだと言い、本人も最初は「最悪だ」と思った
▼しかし、バスの中では「くだらないことを友達と話す時間がとても楽しかった」。クラスメートとの仲が深まり、例年ならできなかった体験が忘れられない大切な思い出になったと振り返っていた
▼修学旅行は学校生活の中でも大きな行事の一つだ。それが縮小されても前向きに受け止め、1日を精いっぱい楽しむ。この高校生と同じ経験を持つ子どもたちも多いに違いない
▼哲学者の三木清は「旅について」のエッセーで、旅で味わう遙(はる)けさは遠さによるものではないと記し、「平生見慣れたものも旅においては目新しく感じられる」とつづった。どんな形でも、旅には発見がある。それを積み重ね、豊かな人生を歩みたい。