「war」。「戦争」を意味する英語は多くの人が知っている。ロシアの侵攻から1年半になるウクライナの戦禍は、まだ先が見えない。連日多くの命が失われ、銃声と涙が絶えない

▼同じつづりの「WAR」という言葉が野球界にある。この競技では打率や防御率など数多くのデータが選手を評価する目安になる。しかし、投手と打者を同じ土俵で評価するのは難しい

▼そこで選手がチームの勝利に貢献した度合いの指標として用いられるのがWARである。投打、走攻守…何十種類もある個人データを総合した通信簿のようなものだ。米大リーグでは選手の価値を測る目安として定着している

▼シーズン折り返しのオールスター戦が日本時間の12日に迫る。前半戦で断トツのWAR1位はエンゼルスの大谷翔平選手だ。唯一無二の二刀流だから単純計算で2人分貢献できる。6月の活躍は記録ずくめで、ア・リーグ最優秀選手(MVP)を月間と週間で同時受賞した

▼30号本塁打は飛距離150メートルで、中継カメラも追えないほどの超特大弾。自己最長飛距離で今季大リーグでも最長だった。その3日前には先発して10奪三振、7勝目を挙げ、2本塁打を放つ活躍ぶりを見せた

▼「憧れるのをやめましょう」。3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でスーパースターがそろった米国との決勝戦を前に、大谷選手は円陣で仲間を鼓舞した。でも今、対戦相手も含めて、この人に憧れるなというのは無理な注文というものだろう。

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