乗っていた車の販売会社から、リコールの通知が届いたことがある。特に不具合は感じなかったが、安心して使えるよう販売店で部品を交換してもらった

▼リコールは、製品に安全上の欠陥が見つかった場合、同じ時期などに製造された商品を無料で回収、修理して事故を防ぐ制度だ。リコールに至らない懸念でも、自主回収などの措置を講じることもある。民間企業は消費者の信用を失うと社運が傾きかねない

▼それに引き換え、政府はトラブル続きのマイナンバーカードの運用を続けている。欠陥商品とも言えるマイナ保険証では別人の医療情報をひも付けたり、医療費が10割請求されたりで、利用者や医療現場から怒りの声が上がる。政府の個人情報保護委員会はデジタル庁に立ち入り検査する方針だが、来秋に紙の保険証を廃止する計画に変更はないようだ

▼コンビニエンスストアでの住民票交付では、他人のものが交付されるトラブルがあった。ただ、こちらは運用を一時停止し、システムを提供する民間企業が再発防止策を検討している

▼この社会で官民の差を感じる場面は多々あるが、マイナカードを巡る問題は最たるものかもしれない。まさか「お上の特権」とばかりに、大方針を変えずとも許されると思っているわけではないだろう

▼そう言えば岸田文雄首相は先の国会で「首相の特権」とも言える衆院の解散権をもてあそんだと批判を受けた。カードの混乱ぶりを見るにつけ、国民がもてあそばれている気がしてならない。

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