暦の上では春になったとはいえ、寒波の動きに一喜一憂する日が続く。部屋のカレンダーに目をやると、写真のつららが目に留まった。美しさとともに雪とは違った寒さが伝わってくる
▼つららの言葉の由来は諸説ある。氷が連なって長くなる。またはつり下がる。さらには表面が滑らかで光沢があることを示す「つらつら」からの変化…。どれも一理ありそうで興味が尽きない
▼北は北海道から南は九州まで、全国各地の方言もあまたある。手元の方言辞典には20を超える表現があった。研究者の間では語彙(ごい)の多さはつとに知られており、国語学者の故・金田一春彦さんも認めている
▼例えば、東北で浸透しているタルヒは「垂る氷」から来ているようだ。関東地方のアメンボは「雨ん棒」が元だろうか。「金氷」の字を当てるカネッコ(オ)リ、カネコロなども本県やその周辺ではなじみが深い
▼金田一さんがつららを見なくなったと書いたのは1965年のことだった。方言研究の泰斗は一因としてアパートが増えたことを指摘している。年々軒のない建物が増え、暖冬傾向も拍車をかける。昔よりもさらに目にする機会が減った今のような環境だったら、つららを表すお国言葉がここまで生まれたかどうか
▼人が住んでいる家にはつららができやすいという。空き家は暖房の熱がないため、屋根に積もった雪が解けにくい。本県を含めて全国の空き家は増え続けている。つららを見掛けなくなったのは温暖化のせいだけではないらしい。