北京五輪の陰に隠れてしまった感があるが、本紙スポーツ面にはほぼ毎日、プロ野球のキャンプの記事が載っている。筆者は、阪神タイガースの原口文仁選手(29)の名前を探すのを日課にしている

▼原口選手は、だるさが続いたため2018年12月、26歳の時に人間ドックを受けた。この年は3月に長女が誕生した。シーズン中は代打で23安打をマーク、球団記録に並んだ。公私とも充実した1年だった

▼19年1月の診断結果は大腸がん、ステージはリンパ節へ転移した3b、5段階のうち2番目に重かった。すぐに手術を受け、抗がん剤の治療を始めた。副作用の血圧低下に悩まされながら練習に励み、オールスターゲームでは2試合連続で本塁打を放つ離れ業をやってのけた

▼19年は43試合、20年は48試合、21年は56試合、代打のほか捕手、一塁手として出場した。シーズンオフには神戸市の小児がん患者の施設に寄付をするなど社会貢献にも取り組んだ

▼大腸がんは増加傾向にある。国立がん研究センターによると、18年に新たに診断されたのは15万2254例で、がんの種類別では1位。19年の死亡数は5万1420人で、肺がんに次いで2位だった

▼今季は外野手にも挑戦する原口選手は著書「ここに立つために」に「自分の活躍によってほんの少しでも同じ病気で苦しむ方の夢や希望となりたい」とつづっている。プロ野球選手は夢を与える職業といわれる。夢とは剛速球を投げたり、場外ホームランを打ったりするだけではない。

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