大きな川が走る新潟市は水の都を名乗ることがある。猛暑の中でも涼しそうな呼び名だ。日本海や佐潟などの潟も水都の大切な要素だろう。一方で「火の国」と呼ばれる九州の熊本県は「水の国」の異称もあると聞く
▼なぜそう呼ばれるのか調べてみると、地下水が驚くほど豊富なのだという。熊本県の資料によると生活用水の8割を賄えるぐらい地下水が豊か。全国平均は2割だというから段違いだ
▼大昔にあった阿蘇火山の大噴火が関係しているらしい。流れ下った火砕流や降り積もった火山灰が水をため込むのに適した地層を形作ったという。そうした大地の恩恵がさらに熊本を潤そうとしている
▼身の回りのあらゆるものに使われる半導体の工場を引き寄せる。ほこりを嫌う半導体は、製造工程で洗浄のためにとりわけ多くの水を使う。台湾の世界的なメーカーが工場を作っている。1700人が働く大きな工場になる
▼豊かな水資源を求め、早くも第2工場を熊本に作る話が出ているというから、うらやましい。地価の動きからも活況がうかがえる。熊本県内の工業地で3割も地価が上昇したところがあった。そこまで跳ね上がると、戸惑いも出てきそうだ
▼進出してくる工場の厚遇が話題になっている。メガバンクと呼ばれる大手銀行より給与が高いといわれる。人手不足の悲鳴が各業界から上がる中、人を集めるのに必死なのだ。熱を帯びた人材獲得競争はいったいどこまで広がるか。火の国熊本からの熱となれば、すごそうだ。