一部ダムの貯水率はついに0%になった。田畑を潤す水の確保に四苦八苦している地域がある。県内は、干ばつと言っても大げさでない状況が近づく

▼県は農家に「フェーン・異常高温緊急情報」を繰り返し発令し、田んぼに水を注ぐよう呼びかけた。いわば水稲の熱中症警戒アラートだ。だが肝心の水がない。「日照りに不作なし」。農家に伝わるこのことわざも、もはや通用しないのか。異常気象をはじめ、農業を取り巻く環境は転換期にある

▼先日、本紙窓欄に寄せられた長岡市の88歳の男性の投稿に感じ入った。長い間、丁寧に使い続けた耕運機が部品切れで修理不能と告げられたという。田を耕し、作物を運び、家族の乗り物にもなった。「時代の流れとはいえ、耕運機との別れは寂しいです」。苦楽をともにした相棒との別れは、さぞつらかろう

▼一方、先端技術を活用したスマート農業の試みも進む。ドローンで薬剤を散布し、センサーで田んぼの水位や水温を管理する。農機具メーカーは衛星利用測位システム(GPS)を活用し、田植え機や稲刈り機などの自動運転と遠隔操作の実用化を進めている

▼県は暑さ対策として、コメの主力品種コシヒカリBLの改良に着手した。従来より品種改良の工程を短縮できる新技術を用いる。高温と病気への耐性を両立させた品種の確立を目指す

▼技術革新が、コメ王国の後継者育成や異常気象対策につながればありがたい。出来秋も近い。耕運機が似合う、豊かな実りの景色が見たい。

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