連日の猛暑と少雨で、県内では稲が枯死した地域がある。生育不良を案じる農家も多い。収穫間近の新米の出来が気にかかる。一方で、古米の動向を心配する人もいる
▼ホームレスら生活困窮者を支える「山谷(やま)農場」を主宰する藤田寛さんだ。神奈川県で働く傍ら、拠点のある長野県や本県を回って古米を集めている。新米が不作だと古米の需要が高まり、十分に提供してもらえなくなる恐れがあるという
▼善意で寄付してもらったコメを、東京や大阪など各地の支援団体に炊き出し用として送る後方支援を続けている。活動を始めてから30年ほどになった。本県にも多くの協力者がいる
▼例年なら、本県と長野県を中心に計7トンほどの古米が集まる。「自分の作ったコメが少しでも役立てばうれしい」とつづられた匿名の手紙とともにコメが届くこともある。先日は中越地域を軽ワゴン車で走り、農家などを回った。猛暑の中、田んぼの水が足りているのか心配で、心が落ち着かなかった
▼長く活動を続けていると、困窮者の状況の変化も感じるという。近年は生活保護の手続きもままならず、持病に苦しむような高齢者が増えている。新型ウイルス禍で仕事を失い、故郷を離れてアルコールや薬物依存で体を壊した人、物価高騰で日々の食に困っている人もいる
▼ホームレスにとって冬の寒さは大敵だ。だが今年は夏の暑さが食料集めの逆風となる恐れがある。「福祉の手すら届かない人を一人でも多く救いたい」。藤田さんの苦闘は続く。