介助のため一晩に7回以上起きる。たんの吸引などの「医療的ケア」が必要な子どもを育てる、ある母親の日常という。下越地方の医療的ケア児と親の会「コクアにいがた」がアンケートで調べた

▼医療的ケア児は新生児の救命率が上がったことで全国的に増えている。県内では推計300人。状態は多様だ。寝たきりの子もいる。気管切開をして機器を付けたり、胃につないだチューブから栄養を取っていたりしても走れる子もいる。居住地によっても使える医療サービスの質や量が異なる

▼アンケートは共通する困り事を探った。多くの親が一時預かり施設の不足を挙げた。ショートステイに対応する施設は県内に8カ所しかなく、都市部に集中する。自由記述には切実な声が並んだ。「夜間の世話で睡眠不足」「介助者も守る支援を」

▼回答は大半が小学生の母親からだった。「就学前、特に子どもが退院して家に戻ったばかりの頃は、命を守るのに必死で声を上げる余裕もない」と会の代表の小島千夏さん。次の世代の環境を変えたいと答えた人もいた

▼調査を基に、会は先月の県議会に一時預かり施設の充実を求め陳情を出した。結果は継続審査。だが「より深く調査し丁寧に対応する必要がある」との理由が付き、詳しい説明も求められた。小島さんは「前向きな動き」と期待する

▼アンケートにはこんな記述もあった。「誰でも当たり前の生活ができるように」。ささやかな、だが心からの願いだろう。実現の道を開かなければ。

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