この夏、四国愛媛を訪れる機会があった。県都松山市は正岡子規や高浜虚子ら著名な俳人を輩出したことから「俳都」を称している。町のあちこちに「俳句ポスト」が置かれ、気軽に投句を呼び掛けているのが印象的だった

▼この地を拠点に俳句の「種」をまく活動を続けているのが、俳人の夏井いつきさんだ。高校生の全国大会「俳句甲子園」を立ち上げ、テレビ番組「プレバト!!」で俳句の添削をする姿はおなじみだ。旅を愛し、多くの弟子を育てた子規の姿に重なって見える

▼愛媛に滞在中、夏井さんの講演を聴いた。心に残る言葉があった。「俳句の季語と付き合うことで、生々しい身体感覚を培うことにつながる」。人工知能(AI)とともに生きる時代の中で、身体感覚は人間の強みだと呼びかけた

▼夏井さんは、地元紙の小中学生向け投句コーナーでも選者を務める。作品が掲載されると地域の人が一緒に喜んでくれ、そんな力を借りて子どもたちが育っていくとも強調していた

▼本紙のジュニア文芸欄にも個人や学校単位で俳句や川柳、短歌、詩の各部門に力作が送られてくる。最近は授業で使うタブレットからの応募も目立つ

▼柏崎市の二田小学校5年生も投稿の常連だ。担任の池田美奈子教諭は「みんなが楽しく参加し、批評し合えるのがいい。あっという間に作っています」と喜ぶ。28日付の紙面では柴原柊吏さんの入選作が目についた。「かき氷いっぱい食べたら頭がキーン」。みずみずしい身体感覚にあふれている。

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