五輪は力や技を競う場である。選手の能力だけではない。道具を開発、製造するメーカーや技術者の力も問われている。北京大会では、本県ゆかりの企業の技術が多くの選手を支えた
▼スキーやスノーボードの板に欠かせない「エッジ」を国内で唯一製造しているのが、上越市の「エッジシステムズ」だ。スノーボード女子ハーフパイプで銅メダルを獲得した妙高市出身の冨田せな選手や5位入賞の妹るき選手をはじめ、多くの代表選手の板に採用されている
▼その冨田姉妹が使った板は、本県発祥のヨネックス製。個々の身体能力やプレースタイルに合わせ、長岡市の工場で仕上げた。テレビや配信映像では、選手が宙を舞う度に滑走面に印字された同社のロゴが映し出された
▼スノーボード女子パラレル大回転で6大会連続出場となった竹内智香選手の板を製造してきたのは燕市の「アクトギア」。ビンディング(留め金具)の支援などで竹内選手が高校生の頃からの付き合いという
▼多くの技術が選手の潜在能力を引き出している。一方でその力を不当に高める技もある。薬物で競技力を向上させるドーピングにも、最先端の技術が注がれることがあるという。今大会に参加する15歳のロシア人選手に禁止薬物の陽性反応が出た
▼渦中の選手は出場を容認されたが、真相究明はこれからだ。ドーピングは競技の公平性をゆがめ、選手の健康をむしばむ恐れもはらむ。技術は選手とスポーツマンシップのためにこそ存在しなければならない。