花壇に咲くビオラの花が日増しに小さくなり、数日後に姿を消した。花の季節を過ぎたのだろうと気にせずにいたら、今度は葉っぱが小さくなってきた

▼なんでだろう。じっと見つめた先に、答えがいた。黒とオレンジ色の毛虫が。それも1匹ではない。スマートフォンで検索すると、ツマグロヒョウモンというチョウの幼虫だった

▼毛虫は苦手だ。駆除しようにも、手を伸ばすのもためらわれる。チョウなら、いつか飛び去ると覚悟を決め、数日後。オレンジに黒いヒョウ柄のチョウが飛び立った頃には、ビオラに葉はなく、引っ張ると根っこがするりと抜けた

▼南方系のツマグロヒョウモンは地球温暖化を象徴するチョウだという。かつては本県で見ることはまれだったが、今は珍しくない。パンジーやビオラなどスミレの仲間を食べるといい、ガーデニングブームも生息域拡大につながったようだ

▼北アルプスなどの高山帯では、ニホンジカの目撃が増えている。温暖化で積雪が減り、移動が容易になったためとの説がある。年間1トンもの草を食べるシカに荒らされれば、植生の回復は難しい。高山植物が減ると、絶滅の恐れが高いライチョウの生息が危ぶまれる

▼北海道では、放牧中のウシを連続して襲ったヒグマが駆除された。凶暴化したのは、急増したエゾシカが、ヒグマの主食である木の実を食べ尽くしたからとも推測される。温暖化を生み出し、止めようとしないのは人間だ。巡り巡って、どんなしっぺ返しがくるのだろうか。

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