「構ってくれよ」という雰囲気で寄ってきたから、軽く首筋をなでると目を閉じてごろり。無防備におなかをさらす。そうか、そうかと手を近づけると、歯をむき出して怒り出した。わが家の同居猫である
▼2月22日は「にゃん」と読める「2」が並ぶので「猫の日」だという。とりわけ、2022年の今年は六つも重なる。こんな年は1222年以来だ。その頃の日本は鎌倉時代。実に800年ぶりとなる
▼拙宅の相棒をはじめ、とにかく気ままで、自分本位な生き物である。「猫なんて、役に立つわけではなくて、迷惑をかけるだけの存在のはずだ」。愛猫についての著作もある解剖学者の養老孟司さんは近著「ヒトの壁」にこんなふうに書いている
▼続けて、こうも記すのだ。「でも、多くの人がそんな迷惑をかけるだけの存在を必要としているとも言える」。役に立つとか立たないとか、そんな物差しでは計れないものが、この世にはあるということだ
▼犬が苦手な知人が冗談半分で言った。「『会社の犬』と呼ばれるくらいなら『会社の猫』と呼ばれたい」。思わず噴き出してしまった。犬のような従順さを持ち合わせていなければ、周囲からの風当たりは強いだろうか。あるいは案外、職場の潤滑油として人気者になるかもしれない
▼〈あくびを するとき ネコのかおは花のようになります〉。まど・みちおさんの詩の一節だ。何かと世知辛く、ぎすぎすした世の中である。だからこそ、この生き物の不思議な力に頼りたくなる。