大相撲秋場所のことを思い出している。横綱は休場、優勝争いに絡む唯一の大関となれば相当な重圧だったはずだ。全休明けでかど番だった大関貴景勝が4場所ぶり4度目の優勝を果たした。かど番を脱した日には「結果が全て」と口にした
▼千秋楽は本割で4敗同士だった関脇大栄翔を下した。ただ、そこで精根尽きたか。注目された平幕熱海富士との優勝決定戦では、立ち合いを変化してはたき込み、若い関取を一瞬で土俵に沈めた
▼平幕相手なら、大関らしくがっしりと組んだ相撲を見たかった、という声もあった。注文相撲で負ければ大関の名を汚す。それを承知で結果にこだわった大関の勝負度胸が、賜杯を引き寄せたのだろう
▼こちらも「結果」への思い入れは強いようだ。「先送りできない課題に一つ一つ取り組み、結果を出す」と、事あるごとに語る岸田文雄首相である。原発の60年超運転や安倍元首相の国葬、安保関連3文書改定など重要課題を閣議決定で決めた。結果を最優先するためか、国会での熟議は置き去りになった
▼一方で先月の内閣再改造では、肝いり政策だった国際人権問題担当の補佐官を空席にした。わずか2年で見切るとは。結果を出すのが難しいためかと勘繰ってしまう
▼20日召集の臨時国会では経済対策の裏付けとなる補正予算成立を急ぐらしい。これも結果を求める姿勢ゆえだろう。片や、先送りできない少子化対策は財源さえ定まらない。結果を導くため、がっぷり四つの与野党論戦を聞きたい。