このところ、いわゆる「大気の状態が不安定」な日がよくあるように感じる。5日には聖籠町などで、おとといは新潟市北区で突風による被害が相次いだ

▼こうした自然の猛威の一つに竜巻がある。地上と上空をつないだ雲が細長く渦を巻き、激しい風を伴う。昔の人は、体をくねらせ天に昇る竜の仕業と考えたようだ。建物などに大きな被害をもたらすことがあるのも、竜を想起させる一因だろう

▼江戸時代に出版され、越後の異聞や怪談を収めた「北越奇談」の冒頭には、著者の橘崑崙(こんろん)が小舟に乗っていた際に竜巻に遭遇した場面が描かれている。直撃すれば、ひとたまりもない。崑崙はとっさに、竜は白刃を恐れると聞いたことを思い出す

▼刀を抜いて額に当て、渦巻く雲に刃を向けた。緊迫感にあふれる場面だが、絵画もたしなんでいた崑崙は竜の姿を見てやろうと目を凝らす。冷静に観察したが姿は見えず、一瞬のうちに竜巻は去っていった

▼見るからに恐ろしげな竜巻は、その形にいくつかのタイプがある。細長いロープやゾウの鼻のようだったり、逆三角すいや煙突形だったりする。見た目と強さは関係がない。ひょろひょろでも猛烈な風を伴うことがある。見た目で判断するのは禁物だ(森田正光・森さやか「竜巻のふしぎ」)

▼冬にかけ、この現象に出くわすことがあるかもしれない。危機に直面した場合は、頑丈な建物に逃げ込むか、くぼんだ場所で身を伏せることなどが大切という。崑崙に倣い、落ち着いて対応したい。

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