分野を問わず、プロフェッショナルな仕事には敬意を抱く。経験を積んで技能も知識も備えた人の、過不足ない仕事ぶりはすがすがしい

▼プロ野球もその名の通り。選ばれし一握りの選手の躍動が見る者を魅了する。その戦いを支える審判や球場整備員らもまたプロ。それぞれが役割を果たすことで華やかな舞台が成立する

▼この人もまさしくプロである。千葉ロッテマリーンズ本拠地の場内アナウンス係を今季で引退する谷保(たにほ)恵美さん(57)。語尾を伸ばす独特の選手紹介はエンターテインメント性も帯び、スタジアムになくてはならない名物になった

▼勤続33年。通算2103試合を声で盛り上げた。レギュラーシーズン最終ゲームの後、ファンで埋まったスタンドからは球場を揺るがす「谷保」コールが湧き起こった。最上級の感謝と親しみがあふれていた

▼高校、短大時代に野球部のマネジャーだった谷保さんは、球場アナウンスがしたくてプロ12球団に2年間電話をかけ続け、現職を得た。技術向上の努力はもちろん、試合の流れを頭に入れるためにスコアブック付けもこつこつ続けた。入れ替わりのある監督らよりも長く、選手の成長も努力も見続けてきた

▼今季のロッテの本拠地勝率は6割近くでリーグ1位だった。日本シリーズの出場権を懸けた戦いでもホームで劇的な勝利を挙げた。谷保効果への注目度も上がった。裏方でも地道に役割を全うするプロに光が当たり評価された好例として、名アナウンサーを記憶しておきたい。

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