毎月23日は、語呂合わせで「不眠の日」だという。2月3日もそう。製薬会社が快眠環境を築こうと決めたというが、こんな残念な日が毎月やってくると、逆に心配で眠れなくなりそうだ
▼「眠らない日本人」は有名だ。経済協力開発機構(OECD)の2021年の調査では日本の睡眠時間は7時間22分で、調査対象の33カ国で最短だった。各国平均の8時間28分より1時間以上も短い
▼「早起きは三文の徳」という言葉には裏がある。睡眠学者の三島和夫医師は著書「朝型勤務がダメな理由」で、早寝してこその早起きで、休養感の伴う睡眠時間確保が大切と説く
▼先日公表された「過労死等防止対策白書」によると、労働者の6割は理想の睡眠時間が7時間以上なのに半数近くが6時間も寝ていない。睡眠の不足感が大きいほど、幸福感が低い傾向にあった。22年度の精神障害による労災認定は710件と過去最多だった
▼日々の睡眠不足の蓄積である「睡眠負債」の影響は、健康面にとどまらない。米国の高校では始業時間を遅らせると睡眠時間が増えて集中力が増し、成績が向上したという。寝不足で生産性が低下する経済損失は、日本では年間15兆円との試算もある
▼中東に目を転じれば、イスラエルとイスラム組織ハマスの大規模戦闘で銃弾や砲弾が飛び交う中、多くの人が眠れぬ夜を過ごす。廃虚となった街をマットレスを抱えて歩く人の写真を見た。そんな現実も直視しなければ。彼らが安眠できる日を願わずにいられない。