ある動画を見た。少女が波打ち際を歩く。その姿に、不登校に苦しむ時期を経てフリースクールに進んだ選択を振り返る語りが重なる。少女が目の前に現れた友人たちに向かって走りだすと、こんな文字が画面に浮かぶ。「きっと居場所はある」

▼長岡市のフリースクール「学びスペースあうるの森」の子どもたちが作った。NPO法人が主催した、学校に行きたくない児童生徒へメッセージを送る動画のコンテストに出品し、最優秀作品に選ばれた。視聴者から共感や相談が寄せられている

▼それだけ居場所を求める子どもが多いのだろう。今月、文部科学省が公表した2022年度の問題行動・不登校調査では、県内の不登校の小中学生は4759人と7年連続で過去最多を更新した。1学級に1人ほどの割合で、専門家は「衝撃的な数字」とする

▼国は対策を急ぐ。学習指導要領に縛られずに授業時間数を減らすことができる「学びの多様化学校(不登校特例校)」の増設といった対策を前倒しして進める考えだ

▼特例校の設置は国と自治体の努力義務とされる。全国に24校あるが県内にはない。今月の県議会では複数の議員が創設を求めた。だが教育長は可能な限り普通学級への復帰を目指すことが本来あるべき姿だとし、消極的だった

▼「本来」の姿に、多くの児童生徒が苦しんでいる現状は文科省の調査で明らかだ。元の学校でも特例校やフリースクールでもいい。選択肢が広がれば、心から言えるだろう。「きっと居場所はある」

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