佐渡市の金山は17世紀に世界最大級の産出量を誇った。島内有志が「世界文化遺産を考える会」を設立したのは1997年。紆余曲折(うよきょくせつ)の四半世紀を経て、順調ならば、2024年に遺産登録の夢が実現する

▼11月末から、知事と佐渡市長が国連教育科学文化機関(ユネスコ)本部のあるパリを訪問するという。ユネスコの世界遺産委員会の委員国などに、あらためて「佐渡島(さど)の金山」の登録と保護の重要性を訴える

▼今年登録された世界遺産は42件。総数は1199件になった。登録された遺産にはパレスチナ自治政府が申請した「古代エリコ/テルアッスルタン」がある。紀元前1万年ごろからの集落遺跡で、「文明の揺籃(ようらん)の地」と評価される

▼パレスチナにはベツレヘムなど4件の世界遺産がある。しかしイスラエルとの紛争が長引く中、戦乱で遺跡が破壊される危機が叫ばれている。パレスチナは11年にユネスコに加盟したが、反発するイスラエルと米国はその後脱退した

▼米国は今年再加盟したが、イスラエルは戻っていない。ユネスコ発足は終戦翌年の1946年11月4日である。「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」。ユネスコ憲章のこの前文は有名だ

▼パレスチナとイスラエルを巡る戦闘は停戦の気配すらない。「平和のとりで」を世界80億人の胸に広げなければ。佐渡の金山も戦争の記憶と無縁とは言えない。本県からも「ユネスコの心」をしっかり発信したい。

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