光が強ければ強いほど影は濃さを増す。関西対決の結末は、勝者と敗者がくっきりと分かれた。勝負事だから当然なのだが、栄冠を手にしたのが屈指の人気球団だったから、敗れ去った者からは黒々とした影が伸びた

▼プロ野球の日本シリーズ第7戦。第6戦まで3勝3敗、がっぷり四つの激闘の末、オリックスは阪神に屈した。最終決戦に臨み痛恨の制球ミスでKOされた宮城大弥投手は「大事なゲームで役割を果たせなかったことが、ただただ悔しい」と唇をかんだ

▼絶大な人気を誇る勝者が放つ光は、ひたすらまぶしかった。笑顔、歓声、感動、称賛…。選手やスタッフはビールをかけ合って喜びを爆発させ、ファンは万歳を繰り返した。報道も圧倒的に、栄光に酔う者たちに光を当てた。勝者がいれば敗者がいる。光があるなら影がある

▼〈帚木(ははきぎ)に影といふものありにけり〉虚子。帚木はコキアとも呼ばれ、この季節は美しく紅葉する。信濃にあるという伝説上の木を指すこともある。影があるから実体が際立つのか、影こそが実体そのもののように存在感を放つのか。敗者の影が色濃いことは、今シリーズが名勝負だったことを意味しているのだろう

▼それはオリックスが強者だったからだ。日本一をかけた決戦に3年連続で出場し、昨年は頂点に立った。もともと強い光を放つ存在だったことは間違いない

▼「月影」「灯影」など、影は光を意味することもある。今回は影をまとった強豪が、さらに強い光を発する日が来るはずだ。

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