食塩と米こうじを発酵させた「塩こうじ」がブームになったのは10年ほど前だっただろうか。一時期ほどの人気は落ち着いたようだが、スーパーに行けば売っている
▼個人的にお気に入りの使い方は、サーモンなどの刺し身にまぶし、なじませるだけ。身がもっちりし、こうじの甘みが魚のうまみを引き出す。小ネギでも刻んで散らせば、小料理屋で一杯…の気分になれる
▼塩こうじに続き、こうじ甘酒もブームになった。こうした食品に含まれる米こうじを日常的に摂取することでストレス軽減につながることを、新潟大など産官学の研究チームが明らかにした
▼米こうじは新潟の伝統的な発酵食品の多くに含まれる。本県の看板食品が健康づくりに役立つことが科学的に証明された形だ。新潟の食のブランドに、一層磨きがかかればありがたい
▼こうじは米や麦などにコウジカビを繁殖させたもの。漢字では「麴」「麹」と書く。醸造学者の小泉武夫さんによると中国からの渡来文字で、現地では麦でこうじを作ることが多く、偏に「麦」を用いた。「麥」は麦の旧字体だ。日本では米を使うことが多いので「米」偏に「花」を添えた「糀」という国字を考え出した。米にコウジカビがつくと、花が咲いたようになるという
▼日本の発酵食に欠かせないコウジカビは、日本醸造学会によって「国菌」に認定されている。米もこうじも、新潟の地に深く根ざした食べ物である。ふるさとの風土に感謝しつつ、今夜の献立でも考えるとしようか。