「推進剤を燃焼させてガスを噴出し、物体を推進させる装置」。手元の辞書はこう説明する。ロケットのことだ。その歴史は火薬とともに幕を開けたらしい
▼千年以上前の中国で火薬が発明されると、その爆発力を使って飛ばす武器が使われるようになった。矢に火薬入りの筒を取り付けるなどしたようだ。その後、ロケット兵器の技術は世界に広まった。19世紀初頭の英国では3千メートル近く飛ばせる兵器が開発された
▼1814年、米英戦争で英国艦隊が米国東海岸のボルティモアを攻撃した際も使われた。これを目撃した弁護士が書いた詩が現在の米国国歌になったといい、その一節に「ロケットの赤い炎」というくだりがある(宮沢政文「宇宙ロケット工学入門」)
▼やがて宇宙に人やモノを運ぶ手段としても使われるようになった。ただ生い立ちは武器だ。現代でも兵器として度々使われる。パレスチナのイスラム組織ハマスがイスラエルに打ち込んだのがロケット弾だった
▼ハマスの兵器は比較的簡易な仕組みのようだが、目標への誘導など精密な性能を備えたものはミサイルと呼ばれる。性能の差こそあれ、これも広い意味ではロケットといえる。おとといの夜更けには北朝鮮が弾道ミサイル技術を使ってロケットを発射した
▼世界中の爆弾が花火であれば戦争は起こらない-。こう語った画家の山下清なら「世界中のロケットが宇宙旅行用だったら…」と言うだろうか。兵器としての使用を止めるすべが見つからないのが歯がゆい。