開会中の今国会でもよく耳にする。「指摘は当たらない」というフレーズである。野党の追及を受けた首相や閣僚が口にすることが多い。安倍政権や菅政権で多用されたが、岸田文雄首相もよく使う

▼自民党5派閥の政治団体がパーティー券収入を過少に報告したとして告発された問題では「裏金との指摘は当たらない」と強調した。減税の後には防衛費の大増税が待つと質問された時も「指摘は当たらない」と反論した

▼口調はソフトでも、的外れな指摘だとして相手を突き放す言い方は冷たく響く。反論の根拠になる説明が十分ではないことが多いから、議論を打ち切るための常とう句に聞こえてくる

▼岸田首相の常とう句といえば「説明責任を果たすべきだ」というのもそうだろう。政務三役に公選法違反などの疑惑が浮上した際も、こう言って当事者にげたを預けた。結局、当事者はすぐに辞任し説明はないままだ。政権の失態に「説明責任を-」と言いたいのは、国民の方である

▼こちらの指摘は当たるだろうか。「参院のドン」と呼ばれ、ことし他界した青木幹雄元自民党参院議員会長が唱えた「法則」だ。内閣支持率と、与党第1党の支持率を足した数字が50%を切ると、首相はほどなく退陣するという

▼共同通信社の世論調査では、二つの支持率の和はまだ50%を切ってはいないが、どちらもじわじわ下がっている。状況は菅政権の末期と酷似しているとも指摘される。首相は「当たらない」と退けたいはずだが、果たして-。

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