週末の休みに高齢の母を連れ、晩秋の福島・会津を車で巡った。訪ねたのは中田、立木、鳥追の三観音。三つの寺で、それぞれの観音像を参拝すると願いが叶う「会津ころり三観音」として知られる

▼三観音は三毒消滅の霊場という。三毒は、邪心な欲を意味する「貪(とん)」と、怒りや憎しみの心を指す「瞋(じん)」、不平不満を言う「痴(ち)」のことだ。人が生まれながらに持つ煩悩と言えようか

▼巡拝して観音様の慈悲にすがると、三毒が消えて長寿に恵まれ、極楽往生できるという。参拝を望んだ母は、父が他界してからというもの、元気にぴんぴん長生きして、寿命がきたら長患いせずに逝く「ぴんぴんころり」に憧れている

▼自分の介護で家族に迷惑をかけたくないと願う高齢者が多いということだろう。三観音はいずこも観光バスが横付けされ、母と同年配の参拝客が多く降り立っていた。その大半は女性で、女性の方が長い平均寿命を反映して見えた

▼日本人の平均寿命は昨年女性が世界トップの87・09歳、男性は世界4位の81・05歳だった。一方、健康上の問題で日常生活を制限されることなく生活できる健康寿命とは10歳ほどの開きがあるという。充実した老後を送るためにも健康寿命を伸ばしたい

▼平均寿命は、2070年に女性が91・94歳、男性が85・89歳になると試算される。人口減が進み、高齢者1人をほぼ1人の現役世代で支える「肩車型社会」が待っている。現役世代のためにも、健康を心がけたい。煩悩は簡単に消せないが。

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