生きた心地がしなかったという。作家の雨宮処凛さんが本紙連載で、スマートフォンを買い替えた際のことを振り返っていた。通信アプリのLINE(ライン)の設定が、どうやってもできない

▼「どうしよう、このままじゃ一生誰とも連絡取れない!」。買い替えた店に半泣きになって駆け込むと、若い店員はいとも簡単に復旧してくれた。デジタル社会についていけない「江戸時代のオッサン」になった気分で、何度も感謝の言葉を繰り返した

▼共感する人も多いのではないか。雨宮さんは各種の設定が憂鬱(ゆううつ)で、買い替えに二の足を踏んだと書いていた。「忘却のかなたのパスワード。一生できないもろもろのログイン」。うまくいかないと通信手段をはじめとするスマホの機能が失われる

▼40代の雨宮さんが不安にさいなまれたのだから、高齢者はなおさらかもしれない。そんな時はデジタル機器に詳しい人が助けてくれればありがたい。でもサポートの名を借りてつけ込もうとする不心得者もいるから注意が必要だ

▼パソコン画面に「ウイルスに感染した」と虚偽の警告を表示させ、対策費名目で金銭をだまし取る「サポート詐欺」の被害が広がる。大音量のアラーム音と警告が繰り返し流され、パニックになったという人もいる

▼本県でも被害や相談が増えている。警告画面に表示した番号に電話するよう誘導する手口が多いらしい。困った時には信頼できる人に相談を。行政の窓口もある。真にサポートしてくれる人はきっといる。

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