新潟の方言に「のめしこき」がある。怠け者を指す。「のめしこきの節句働き」や「のめしこきの正月働き」ということわざも。人が骨休みする節句や正月に、怠け者は逆に忙しそうに勤勉をアピールする

▼真面目な越後人が怠け者をからかい、反面教師としたのだろうか。この季節、のめしこきの気が重くなるのは歳末の大掃除だ。12月13日に「すす払い」をし、正月準備を始める習わしもある

▼もっとも、掃除をすることで健康を手に入れられるとなれば、のめしこきを返上しようかという人もいるかもしれない。厚生労働省の検討会がまとめた「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、体を動かす具体例として掃除などの家事も挙げる

▼身体活動の強度を数字で示し、座って安静にしている状態を1・0とした場合、歩行は3・0。家事なら料理や洗濯は2・0で、家財道具の片付けや台所の手伝いなら3・0だ。床磨きや風呂掃除は3・5である

▼ガイドは健康づくりに向け、歩行と同程度以上の活動を成人なら1日60分以上、高齢者は40分以上することを勧める。家事もこれを目安に取り組めば家はすっきり、自分も元気はつらつになる寸法だ

▼自民党安倍派の裏金疑惑で、岸田文雄首相は内閣や党の要職にある関係議員を交代させる構えだ。政権の大掃除とばかりに「政治とカネ」のほこりを払おうということか。その程度のすす払いで済む話ではないだろう。政界の大掃除に向けて、のめしこきではいられない。

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