きのう早朝、暗いうちに目が覚めた。枕元のスマートフォンを手に取り画面を点灯させる。まだ5時にもなっていない。雪の降り方が気がかりで覚醒したようだ

▼スマホで雪の状況を確認する。この時間の新潟市中央区の積雪は8センチ。夜の間も増えていない。今のところは除雪車が出るほどの降り方ではないようだ。一安心して二度寝を決め込んだ

▼明るくなり始めた頃に起き出した。窓の外を眺めると、白いものが落ちてくる。降り出したな。その程度の受け止めでしかなかった。ところが間もなく、もさもさと降り始めた。みるみるうちに積もっていく。慌てて長靴を履き、スノーダンプを握った

▼積雪は午前7時に16センチ、8時に24センチ、9時には28センチに達した。山沿いの地域からすれば、どうということはない水準だ。しかし時間帯が悪かった。通勤・通学の時間と重なった上に道路除雪が間に合わない。交通に大きな混乱が生じた

▼〈やがて、雪になった。はじめのうち、雪片は軽くて、まるで空気の中から次々に湧いて出るように漂っていたが、しばらくすると大きく重くなり、あたり全体を埋めて本格的に降りはじめた〉。池澤夏樹さんの小説「スティル・ライフ」の一節だ

▼このシーンは早春だったが、きのうの朝の風景は芥川賞作家の筆致そのものだった。いや応なく真冬の到来を実感する。温暖化が進む近年は雪の降り方が極端になった。普段は少なくても、降る時にはどかっと来る。油断ならない。きょうも雪の予報である。

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