○○よ、お前もか。昨今の値上げラッシュで、何度この言葉を吐いたことか。食料品から日用雑貨まで多くの項目が「○○」に当てはめられていく。新たに加わりそうなのが「手紙」である
▼総務省は郵便料金を引き上げる省令の改正案を審議会に示した。改正されれば来年秋にも、消費税増税時を除き30年ぶりに値上げされることになる。25グラム以下の手紙、はがきのいずれも3割を超える値上げだ
▼ここ一番で手紙が大きな役割を果たしてくれることがある。先日亡くなった長岡市の花火師、嘉瀬誠次さんとの出会いについて同僚記者が書いていた。「新聞に出るような人間ではない」と取材を何度も拒まれたが、最後に手紙を書いてお願いすると「下手な字で一生懸命書いてくれたな」と応じてくれた
▼わが身にも同じような経験がある。こちらの思いを精いっぱいしたためたはいいが、便せんには多数のミミズがのたくっている。泣きたくなったが、ままよと投函(とうかん)した。後日、取材に応じる旨の返信が届いた時は本当に涙が出そうになった
▼電話や電子メールでは届かない思いがある。ただ、われながら手紙を出す機会はめっきり減った。諸経費も高騰しているとなれば、うーむと考え込む
▼料金値上げで手紙やはがきを気軽に出せなくなるとすれば寂しい。値上げ方針を伝える紙面には総務省審議会の委員で消費生活コンサルタントの三浦佳子さんの談話が載っていた。「納得したと簡単に言って良いのか迷いはある」。そうだよなぁ。