もういくつ寝るとお正月-。年の瀬、おなじみの童謡が商店街やテレビで流れてもいいころだ。でも、近年はあまり耳にしない気がするのはなぜだろう
▼笑顔でごちそうを囲み、お年玉をいただく。子どもたちはかつて、新年を指折り数えて待った。魚沼地方では、正月までの日数と同じ数の薪(まき)を、むしろの下に入れておき、毎日1本ずついろりにくべて待ちわびたという。そんなハレの日も、生活が豊かになるにつれ、ありがたさが薄れたのだろうか
▼「数え日」という季語がある。新年まであと何日か。大人も指折り数え新春を待つ。同時に行く年を省みて、思いにふける。〈数へ日の人の命を数ふごと〉。岩手出身の俳人、山口青邨(せいそん)はこの時季、亡くなった知人や友人らを思い浮かべて思い出に浸ったのか
▼地球上の人の命は昨年、80億を超えた。この中には餅やごちそうどころか、毎日の食べ物にも事欠き、飢餓に直面している人々がいる
▼国連によると、その数は7億3500万人に上る。新型ウイルス感染症が広がる前の2019年から1億2千万人も増えた。日本の人口に匹敵する数だ。アフリカでは5人に1人が飢えている。異常気象や農業大国ウクライナで続く戦乱の影響も大きい
▼イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘では10月以来、2万人以上の命が失われたとされる。その多くが民間人であり、子どもたちだ。東欧も中東も殺し合いは止められないのか。かの地で指折り数えて待つのは、新年よりも終戦の日である。