消波ブロックに乗り上げた漁船=1月2日、佐渡市羽茂地区
消波ブロックに乗り上げた漁船=1月2日、佐渡市羽茂地区

 1月1日に石川県能登地方を震源とする地震が発生し、各地で大きな被害が出ている。新潟県内では長岡市で最大震度6弱を観測したほか、津波と思われる被害が確認されている。新潟市では西区を中心に液状化とみられる被害が出ている。1月1日から2日にかけ、新潟日報記者が県内各地を取材し、地域に住む人たちから津波や地震の揺れに遭遇した「その時」の様子を聞いた。(2回続きの2)

◆[佐渡市]「船が流されてしまった」、津波は「すごい力だ」

 「ゴウゴウという音を立てて、津波が向かってくるのが見えた」。新潟県佐渡市羽茂地区で、漁船を流された漁師の男性が、高台から津波が漁港内に入ってくるのを目撃した衝撃を語った。

 羽茂大橋の男性(68)は、1月1日夕の地震直後、津波警報を聞いてすぐに集落裏手の高台に避難した。避難後まもなく、ゴウゴウという音を耳にし、所有する漁船「やまと丸」を停泊してある羽茂漁港大橋を見下ろすと、200メートルほど沖合から白い波頭を立てて津波が押し寄せてくるのが見えた。「午後4時半ごろだったと思う。海からは直線距離で300メートルほどの場所だったが、波頭を立てた黒っぽい波が、2メートルほどある堤防を越えて港内に入ってくるのが見えた」と振り返る。

 男性は波が引いた時を見計らって様子を見に高台から漁港に下りた。「自分の船が流されていくのが見えた。手が届きそうだったので、ロープを持って堤防まで行ったが、流されてしまった」と話す。

津波で漁船が流されるなどの被害があった羽茂漁港大橋=佐渡市羽茂地区

 羽茂漁港には、10叟(そう)余りの漁船がとまっていたが、ほかの船も横になったり、クッションとして船の下に敷いていたタイヤやパイプがなくなったりしていた。漁網やカゴなどが流木などの海洋ごみとともに、陸地側に70メートルほど流されて散乱しており、草もなぎ倒されていた。

 佐渡漁協小木支所羽茂出張所運営委員長の金子文雄さん(70)は「船がいったん全部浮いたのだろう。重い漁具も流されている。(津波は)すごい力だ」と驚き、「船底に穴があかないよう、クレーンでつり上げないと漁に出られない。きょうから漁に出ようと準備していたが、しばらく先になりそうだ」と顔を曇らせた。

 2日午前、沖合でやまと丸が見つかったとの知らせを受けた男性はほっとした表情を見せながら「津波があんな音がするなんて。台風や新潟地震の時も聞いたことがない、すごい音だった」と興奮したように思い返した。

◆[十日町市]農作業所が倒壊

 1月1日午後に発生した能登半島地震で、新潟県十日町市松之山松口では市臨時職員の男性(65)の自宅敷地内にあった木造2階建ての農作業所が倒壊した。当時自宅にいた男性は2日、「横揺れが長かった。揺れている最中に農作業所が倒壊したのが見えた」と話した。

 農作業所は築50年近くで少し傾いていたが、2004年10月の中越地震や11年3月の新潟・長野県境地震では被害がなかったという。中に置いていた農具などが損傷した。男性は「まさか倒壊するとは思わなかった」と驚いていた。

 十日町市では2日、地震による漏水の調査や修理のため、松之山地域と松代地域の計4集落44戸で一時、計画断水を行った。

地震で倒壊した農作業所=1月2日、十日町市松之山松口

=おわり=

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能登半島地震の液状化被害、なぜ新潟市西区で特に大きかった?