1月1日に石川県能登地方を震源とする地震が発生し、各地で大きな被害が出ている。新潟県内では長岡市で最大震度6弱を観測したほか、津波と思われる被害が確認されている。新潟市では西区を中心に液状化とみられる被害が出た。新潟日報記者が県内各地を取材し、地域に住む人たちから津波や地震の揺れに遭遇した「その時」の様子を聞いた。(2回続きの1)
◆[上越市・関川付近]「ここまで勢いがあるなんて…」
1日に発生した能登半島地震で、新潟県上越市の関川河口付近や海岸部には津波が押し寄せた。川からの溢水(いっすい)と思われる水に漬かった住宅街や、波に襲われた海の家では、2日朝から片付けに追われた。住民らは「新年早々こんなことが起こるなんて」と口をそろえた。
上越市港町1の関川河口付近では、1日午後4時半過ぎ、津波が川をさかのぼり住宅街に流れ込んだ。右岸でスナック「ジャンボ」を経営する女性(74)の店舗兼自宅では、近くに止めてあった車が押し流されて玄関に直撃。泥混じりの水や流木、石が1階の居間などに流れ込んだ。

関川河口付近の住宅街で、津波によって流された堆積物の片付けに追われる住民ら=1月2日、上越市港町1
安田さんは「何から手を付けていいのかわからないほど家の中はめちゃくちゃ」と途方に暮れた。親族や友人ら10人ほどと水に漬かった家具などを外へ運び出し「行政には早く支援策を示してほしい」と訴えた。

関川河口付近の住宅街で、津波によって流された堆積物の片付けに追われる住民ら=1月2日、上越市港町1
なおえつ海水浴場では海の家7軒全てが被害を受けた。そのうち海の家すず風では建物の海側をふさいでいたトタン板が津波の勢いで押し倒され、建物内に大量の土砂が流入した。
「すず風」の経営者(74)は「波消しブロックを乗り越えた波でもここまで勢いがあるなんて」と驚いていた。

津波に押し流された構造物=1月2日、上越市川原町の関川河口付近
一方、上越市国府の男性会社員(44)は1日午後5時ごろ、河口から1キロほど上流にある直江津橋付近の建物で、津波が関川を遡上(そじょう)する様子を目の当たりにし、動画を撮影した。「音がすごくて怖かった。まだ余震も続いているので油断できない」と話した。
また、糸魚川市の筒石川でも津波の遡上が確認された。
◆[糸魚川市]外壁が崩れた建物も
新潟県糸魚川市の糸魚川駅近くでは、外壁が大きく崩れた建物もあった。糸魚川市大町1で歯科医院を経営する男性(64)は「家の中で隆起した部分と沈んだ部分があり、建物全体が傾いてしまったようだ。被害の全体はまだ把握しきれていない」と語った。

糸魚川市の被害状況 外壁が大きく崩れていた建物=1月2日、糸魚川市大町2
糸魚川市清崎の善導寺では本堂の位牌(いはい)約300個が倒れ、副住職と家族3人が元の場所に戻していた。副住職の男性(51)は「地震が起きた時は無我夢中で本堂の仏様を押さえた。この寺は高台にあるので、避難してくる人もいた」と話した。

能登半島地震 糸魚川市の被害状況 本堂の約300個の位牌(いはい)が倒れた善導寺=1月2日、糸魚川市清崎
特集[能登半島地震]写真で伝える・能登地方など各地の被害状況
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