本県をはじめ日本海側の津波の特徴は、地震が発生してから海面水位が変化するまでの時間が非常に短いことという。津波を引き起こす地震が、陸に近い海域で起きやすいと考えられるためだ。避難に費やせる時間はさほど多くない
▼元日の能登半島地震でも県内に津波が押し寄せた。上越市では関川をさかのぼる波が確認された。河口付近では住宅街にも流れ込み、泥混じりの海水や流木が流れ込んだ家があった。石川県の震源に近い地域には多数の家屋が流されたような形跡が見られた
▼1964年の新潟地震の際、震源に近い粟島では消防団員が半鐘を鳴らし、住民が高台に逃げたという。山北村(現村上市)では、海面の変化に気づいた人が「津波だ!」と叫び、住民は裏山に避難した
▼一方、津波への認識が十分ではなく悲劇が拡大したケースもある。秋田県を中心に多数の犠牲者が出た83年の日本海中部地震では「日本海には津波が来ない」と考えていた人が多くいたらしい。東京大地震研究所の吉田真吾教授が以前本紙に寄せたコラムで指摘していた
▼日本海でも津波は来る。中でも本県は陸に近い海域に断層が多いという。「全国でも屈指の早さで津波が来る」と警鐘を鳴らす専門家もいる。きのうの小欄で述べたことを繰り返す。自分が暮らす場所の特性を理解しておきたい
▼知ってはいるつもりだったが、自治体が作成したハザードマップの内容に改めて目を通した。起こり得る災害について想像力を働かせる一助とする。