正月のことほぎは15日の小正月で締めくくりになる。「さいの神」 「どんど焼き」といった火祭りや「まゆ玉飾り」など多彩な伝統行事が各地に残る

▼小正月は子どもが主役で、おおらかな印象だ。作物を食い荒らす鳥やモグラを追い払う豊作祈願の習俗もある。 「鳥追い」は、「ほんやら洞」「鳥追い堂」とも呼ばれるかまくらとセットの場合が多いようだ。ここに子どもが集い、餅を焼いて腹ごしらえする。その後、拍子木を打ち、鳥追い歌を響かせて集落を巡る。かまくらは鳥追いの拠点だった

▼小正月でなくても、よく作ったことを思い出す。雪山を築いてスコップで穴を掘る。小さな空洞に座ってミカンを食べて「よくできた」などと自己満足に浸る。穴を広げすぎると崩れてしまう。重い雪が落ちてきて、泣きべそもかいた

▼共同通信の記者だった田崎与喜衛さんの故郷、見附市では「ガマンドウ」と呼んだそうだ。もっぱら子どもが遊びで作るが「吹雪の折りの保身のための準備的遊戯だったのでは」と自著「雪の降る国」で推考している

▼かまくらの季節は厳冬だ。周囲に民家のない、たんぼ道などで猛吹雪に襲われたら命に関わることもある。あの雪遊びを思い出し、雪洞を作れば一時的な待避所になる

▼長期予報は暖冬少雪でも「まさか」の事態が起こるのは年明けから骨身にしみている。ドカ雪には油断ならない。雪下ろし中の事故が多発する時季でもある。かまくらに倣い、普段から万一の状況に備えることにしたい。

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