東京電力が目指す柏崎刈羽原発の再稼働に向けた動きは、東電自らが引き起こした不適切な対応で曲折をたどっている。東電は原発が立地する新潟県民の信頼回復を図るが、なお問題が相次いでいる。柏崎刈羽原発は2012年から全7基が停止したままとなっている。

 柏崎刈羽原発6、7号機について東電は2013年9月、東電福島第1原発事故を踏まえて安全対策を厳格化した「新規制基準」の適合性審査を原子力規制委員会に申請した。17年2月には、重大事故時に対応拠点となる施設の耐震性不足を規制委に報告していなかったことが発覚するなどずさんな対応が露呈し、審査が長引いた。このうち7号機は20年10月までに、再稼働の前提となる規制委の審査に合格した。

柏崎刈羽原発

 こうした中、新潟県民の安全性が脅かされかねない問題が2021年1月に発覚した。外部からの侵入を検知する設備が、長期間機能しておらず、代替措置も不十分だった問題だ。同時期、運転員が同僚のIDカードを使って中央制御室に不正入室したことも分かった。

 これを受け規制委は、問題の深刻度や重要度を史上初めて「最悪レベル」と判断。21年4月には柏崎刈羽原発での核燃料の移動を禁じ、事実上の運転禁止命令を出す事態に発展した。

 その一方で、岸田文雄首相は2022年8月、柏崎刈羽原発6、7号機を含め、新規制基準の審査に合格した原発7基の再稼働を目指す方針を表明。政府は福島事故後に掲げた「原発の依存度低減」から、「原発回帰」へとかじを切った。

柏崎刈羽原発(奥)と柏崎市街地(手前)

 23年2月には、原発を最大限活用することを明記した「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」が閣議決定された。5月には福島事故後に導入した「原則40年、最長60年」とする原発の運転期間規定を変更し、60年超運転を可能にする「GX脱炭素電源法」が成立した。

 新潟県では、2012年に始まった福島事故に関する「三つの検証」が23年9月に終了。花角英世知事は「県として柏崎刈羽原発の再稼働に関する議論を進めていく」と表明している。

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