参院側の派閥幹部からも「知らなかった」「関与していない」という言葉が繰り返された。またしても幹部の無責任さが際立った。
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた参院の政治倫理審査会が14日、開かれた。安倍派(清和政策研究会)の参院側会長だった世耕弘成前参院幹事長ら同派の3人が出席した。
だが審議で新事実はなく、政倫審では不十分なことが露呈した。これでは偽証罪を問われる証人喚問へ移行せざるを得ない。
注目されたのは、安倍派参院側を率いた世耕氏の発言だ。
2022年4月に会長だった安倍晋三元首相の指示で中止を決めた資金還流が、同年7月の参院選後に復活した経緯について、どう説明するかが焦点となった。
世耕氏は同年8月に自身を含む安倍派幹部で集まった際に、資金還流を収支報告書に記載する案が出され、反対しなかったとしたが、この場で還流復活が決まったことは「断じてない」と明言した。
先立つ衆院政倫審では、出席した幹部が、協議の結果を「困っている人がいるから仕方ないというぐらいの話し合いで継続になった」「結論は出ていない」と発言し、食い違っていた。
この協議で還流復活が決まらなかったとすれば、いつ、どこで、誰が決めたのか、謎のままだ。
世耕氏に続いて出席した西田昌司元政調会長代理は、還流の存在は報道で初めて知ったと釈明した。安倍派幹部については「誰一人、まともに答えている人がいない」と批判した。
安倍氏が亡くなった後、安倍派は複数幹部による集団指導体制を敷いてきた。派内から表立った批判が出るのは、幹部らが責任感を欠いていることがあるだろう。
安倍派では参院選の年に、改選対象の参院議員に、パーティー券の販売ノルマと超過分の全額を還流する独自ルールがあったことも判明している。
政倫審に出席した橋本聖子元五輪相は、改選の19年に1566万円が還流された一方、前後の年は200万円台だった。
橋本氏は、選挙活動での還流資金の使用は否定した。世耕氏も「選挙に使うことは、基本あり得ない」と述べた。
では、何のために改選の年だけ全額還流されたのか。参院側会長だった世耕氏は、経緯を調べて説明する責任があるはずだ。
自民党は裏金事件を受け、党則、規律規約、ガバナンス・コード(統治原則)の改正案をまとめた。17日の党大会で正式決定する。
会計責任者が刑事処分された場合に、議員への処分を厳格化することが柱だが、今回の事件では改正案に基づく処分はしない。
政倫審と党則改正で幕引きを図る思惑が透ける。だが優先すべきは、国民に真相を示すことだ。