集まった大勢の人々に対して、無差別に銃口を向ける手口は卑劣極まりない。悪質なテロ攻撃は決して許されるものではなく、断固として非難する。
モスクワ郊外のコンサートホールに22日夜(日本時間23日未明)、迷彩服の数人が押し入り、ロックグループの公演を待っていた観客らに自動小銃を乱射した。
ロシア連邦捜査委員会は130人以上が死亡したと発表した。爆発と火災が起き、負傷者も多数に上っている。
罪のない人々の命を突然奪った犯行に強い憤りを覚える。
ホールには数千人がいたといい、甚大な犠牲が出ることを狙った凶行なのは明らかだ。
テロ攻撃の真相が明らかにされなくてはならないが、関与を巡る情報は交錯している。冷静に見極める必要があるだろう。
ロシア連邦保安局は、テロに直接関与した4人を含む11人を拘束したとプーチン大統領に報告した。実行犯らはウクライナ側と接触を持ち、ウクライナ側に越境しようとしていたとしている。
一方、ウクライナ外務省は、銃乱射への関与を「断固として否定する」と声明を出している。
ロシアの発表は、侵攻したウクライナとテロに関連があると印象付けるものに受け取れる。
プーチン政権を敵視し、ウクライナ側から越境攻撃を続ける武装集団「ロシア義勇軍団」が関与したという捜査関係者の見方を伝えるメディアもある。
銃撃後には、過激派組織「イスラム国」(IS)が、犯行声明を系列メディアで発表した。
米紙は、米国の安全保障当局者らが、アフガニスタンに拠点を置くIS系勢力「ISホラサン州」による犯行とみていると報じた。
IS系勢力がロシアを標的にするのは、イスラム教徒抑圧に加担する勢力とみているためだと説明する専門家は多い。
米国は今月、モスクワでのテロ計画の情報を入手し、ロシア側にも伝えていたという。
ただその情報が今回の乱射を指しているかは不明で、危機が継続しているかは判然としない。
ウクライナ侵攻や、イスラム組織ハマスのイスラエル奇襲に端を発した戦闘で国際社会が不安定さを増す中で、ISが活動を活発化させているとすれば、国際平和がさらに大きく揺らぎかねない。
ロシアは侵攻を長期化させ、米欧との対立を深めている。本来、テロに対しては国際社会が協調して立ち向かう必要があるはずだ。
圧倒的な得票率で通算5選を決めたばかりのプーチン氏だが、大統領選では政権に対する国民の不満もうかがえた。
プーチン氏は、国際社会の分断を招いた侵攻を一刻も早く収束させ、国内外の安定を図ることが求められていると自覚すべきだ。