極めて殺傷能力の高い戦闘機の輸出に、厳格な歯止めをかけたとは言えない。国会の議論を経ず、なし崩し的に拡大される武器輸出に、戦後、平和国家として歩んできた日本の国際的信用が損なわれることを深く憂慮する。
政府は26日、英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の第三国輸出を解禁する方針を閣議決定した。これに基づき、国家安全保障会議(NSC)で、防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、要件を定めた。
昨年12月に、外国企業の許可を得て日本で製造するライセンス生産品などの輸出を解禁したのに続く、安保政策の転換だ。
このとき政府は2014年の三原則制定後、初めて殺傷能力を持つ武器である地対空誘導弾パトリオットの対米輸出を決めた。
パトリオットに次いで戦闘機という相次ぐ武器輸出の決定になる。憲法9条に基づいた専守防衛の理念の空洞化が、一層進むことが危惧される。
それなのに、国会に一切諮らず、自民党と公明党の与党協議だけで決めた手法は国民を軽視し、あまりにも不誠実だと言えよう。
共同通信社が今月実施した世論調査では、共同開発した次期戦闘機の他国への輸出について、「同盟国や友好国などに限定」が48%、「輸出は一切認めるべきでない」が45%と拮抗(きっこう)していた。
だからこそ国会で堂々と論議すべき問題のはずだ。
運用指針の改定では、現に戦闘が行われている国には輸出せず、輸出先を日本と「防衛装備品・技術移転協定」を締結した15カ国に限定した。個別案件ごとに閣議決定することも決めた。
自民は当初、戦闘機を含め幅広く国際共同開発品を輸出できるようにルールを見直す方針だった。これに対し、「平和の党」を掲げる公明が慎重姿勢を示し、歯止め策を要求していた。
しかし、輸出先では監視が行き届かず、国際法違反の攻撃に使用される可能性がある。
木原稔防衛相は「万一、侵略などに使われる場合、是正要求や部品移転の差し止めを含め厳正に対処する」と国会で答弁した。これでは、使用されることを前提としているようなものだ。
現に戦闘が行われていない国だとしても、いつ紛争当事国になるか分からない。
協定を結んだ15カ国の他にも複数と交渉中で、今後対象国が増えていくことも考えられる。
今回は次期戦闘機に限定したものの、将来の輸出品目の拡大が懸念される。その都度閣議決定をするとしても、国会が関与する仕組みがなくては、歯止めにならないことは明らかだ。
政府は、武器輸出を安易に拡大させず、国民が納得できる説明を尽くすべきだ。